研究課題
平成18年度の研究では、インスリン抵抗性のモデルマウスであるKK-A^yマウスを用いて、アセトアミノフェン誘導肝障害がインスリン抵抗性マウスで増悪し、肝細胞におけるROSの産生増強がその増悪メカニズムに深く関与していることを示した。そこで、今年度ではアセトアミノフェン肝障害増悪メカニズムの詳細な解析と、肝細胞の脂肪沈着とアセトアミノフェン肝障害増悪の関連についての研究を行った。in vivoの検討では、KK-A^yマウスの肝臓ではアセトアミノフェン処置後のJNK-2の活性化が著明に亢進しており、肝細胞壊死の亢進に関与したことが明らかになった。肝細胞の脂肪沈着については遊離脂肪酸の影響に注目し、初代培養肝細胞に遊離脂肪酸を添加してROSの産生メカニズムに対する影響を調べた。その結果、遊離脂肪酸によって前処置を行うと肝細胞の細胞質内に脂肪滴が沈着し、tert-butyl hydroperoxide添加による肝細胞壊死およびROS産生が増悪した。今回の研究により薬物性肝障害の発症・増悪におけるインスリン抵抗性の関与とそのメカニズムの一端が解明され、ひいては薬物性肝障害の発症予防・早期治療におけるターゲットとしてインスリン抵抗性に伴うシグナルの変化が重要であることが示された。また、肝細胞脂肪沈着によるROS産生刺激に対する感受性の亢進は非アルコール性脂肪性肝炎の発症・進展にも関与している可能性があり、メタボリックシンドローム関連の肝障害全般のメカニズム解明にも関連しうる結果と考えられた。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
J Gastroenterol Hepatol 22
ページ: S49-52