これまで世界中の多くの研究施設でHCVはウイルス単独ではなく、血清中の夾雑物や細胞より分泌される蛋白質や脂質等の様々な物質と共在している可能性が示されてきた。また、HCVに対する中和抗体誘導、ワクチン開発が精力的に行われているが、HCVのウイルス培養系が存在しなかったため、未だ十分な成果が得られていない。本研究は培養細胞で作製した感染性HCV粒子の精製法の確立、HCV粒子の性状解析を行い、ワクチン開発へ応用する事が目的である。 第一にHCV RNA複製やウイルス粒子形成効率に関して、実験に使用するウイルスゲノム構築および培養細胞を検討した。また、培養上清からウイルス粒子を効率よく精製するために血清濃度等の培養条件を検討した。第二に限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、しょ糖密度勾配超遠心等の方法を用いて、ウイルス粒子精製法を検討した。HCVコア蛋白量を高感度ELISA法、HCV RNAコピー数を定量的RT-PCR法により測定した。 培養条件の検討、精製法の確立により、感染性HCV粒子を含んだ培養上清より約2000〜9000倍の精製度を有したウイルス粒子の精製標本を得た。 培養細胞上清中に分泌されるウイルス粒子より夾雑物を除去し精製度を高め、ウイルス粒子の性状を検討した。現在は、精製ウイルスを実験動物に免疫して、細胞性免疫反応や中和抗体の誘導などを検討中である。本研究はワクチン開発へつながる事が期待できる。
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