本研究は培養細胞で作製した感染性HCV粒子の精製法の確立、HCV粒子の性状解析を行い、ワクチン開発へ応用する事が目的である。 培養上清から精製したウイルス粒子を用い、電子顕微鏡・SDS-PAGE・Western-blotting法・蛋白質量解析・脂質解析を行い、ウイルス粒子の性状を物理学的、生化学的に解析した。感染性HCV粒子を含んだ培養上清より約2000〜9000倍の精製度を有したウイルス粒子の精製標本を用いて性状解析した結果、HCV粒子は粒子単独ではなく、培養液中の添加物や培養細胞より分泌される蛋白質や脂質等の様々な物質と共在している事が示された。精製したウイルス粒子はキメラマウスに感染性を有し、持続感染を確認した。精製ウイルス粒子をUVにて不活化後、adjuvantと懸濁し、6週齢の雌のBALB/cマウスに免疫した。その後定期的に、免疫を繰り返すとともにマウス血清を採取した。マウス血清中のリコンビナントHCV-E2およびE1蛋白質に対する抗体価をELISA法にて測定した。さらに感染中和活性を測定するためにHCV粒子の感染阻止実験を行った。精製ウイルス粒子を免疫したマウスでは、HCVのE2およびE1に対するELISA法にて抗体価の上昇を確認した。同血清を用いたHuh7細胞へのHCV粒子の感染阻止実験では、濃度依存性に感染阻害がみられた。 培養細胞上清中に分泌されるウイルス粒子より夾雑物を除去し精製度を高め、ウイルス粒子の性状を検討した。現在は、精製ウイルスを実験動物に免疫して、細胞性免疫反応や中和抗体の誘導などを検討中である。本研究はワクチン開発へつながる事が期待できる。
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