マウスの冠動脈を結紮することにより心筋梗塞(MI)を作成した。MIマウスは、心筋リモデリングおよび心不全を呈した。小動物用トレッドミルを用いて、MIマウスおよび偽手術マウスの運動能力測定および呼気ガス分析を行った。MIマウスでは偽手術マウスと比較して、疲労までの仕事量が低下していた。この時、最大酸素摂取量の低下を伴っていた。同様に最大二酸化炭素産生量も低下しており、呼吸交換比は変化がなかった。 さらに、酸素電極を用いて摘出骨格筋から単離したミトコンドリアの酸素消費を観察した。MIマウスのミトコンドリアでADP依存性酸素消費速度(State3)が低下していたが、ADP非依存性酸素消費速度(State4)は変化がなかった。また、骨格筋重量は変化がなく、骨格筋組織学的検討では骨格筋細胞や間質の形態に明らかな変化を認めなかった。また、ルシジェニン化学発光法を用いて、MIマウスの下肢骨格筋でNAD(P)H oxidase由来の酸化ストレスが増加していることを確認した。 次に骨格筋酸化ストレスの役割を検討するために、低濃度のアンジオテンシン2(Ang 2)を慢性投与したモデルを作成した。このモデルでは高血圧・心肥大は認めなかった。また、骨格筋萎縮もなかった。このモデルでは骨格筋酸化ストレスが増加していることが確認された。MIモデルと同様の実験を行った。運動能力は低下し、最大酸素摂取量の低下を伴っていた。ミトコンドリア酸素消費実験ではState3は変化がなかったが、State4の増加があった。さらに、ミトコンドリア複合体活性1および3が傷害されていた。Ang 2慢性投与と同時にNAD(P)H oxidase活性の抑制剤であるアポサインを投与したところ、運動能力・酸素摂取量・ミトコンドリア機能は改善した。 これらの実験より、骨格筋酸化ストレスが運動能力に重要な役割を果たしていることが示された。
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