1.TNF-αの産生抑制因子であるtristetraprolin(TTP)の心不全発症機序への関与を検討した。野生型マウスを用いて圧負荷モデルを作成し、TTPの発現がどのように変化するのかを再検討した。その結果TTP発現量は圧負荷による心肥大、心不全進行の過程で次第に減少することが明らかとなった。また、TTP floxマウスを作成し、これを心筋特異的Crerecombinase発現マウスと交配することにより、心筋特異的TTP欠損マウスを作成した。このマウスの定常状態での心機能を心臓超音波で検討したところ、コントロールマウスと有意差を認めなかった。現在圧負荷に対する表現型を検討中である。 2.また、TNF-αの産生に関与する転写因子であるNF-κBpathwayの心不全発症機序への関与を検討するため、その活性化因子であるIKKβのfloxマウスを用いて、これを心筋特異的Crerecombinase発現マウスと交配することにより心筋特異的IKKβ欠損マウスを作成した。このマウスは定常状態ではコントロールマウスと同等の心機能を有していた。ストレスに対する反応性を検討するため圧負荷をかけたところ、欠損マウスではコントロールマウスと比較して、容易に心機能が低下し心不全を発症することがわかった。欠損マウスでは圧負荷後のMnSODの発現量が低下しており、酸化ストレスが増加し心筋細胞のアポトーシスが増加していた。心筋細胞におけるNF-κBはストレスに対して保護的に作用しているものと考えられた。
|