細胞接着分子nectin-2のノックアウトマウスを用い、以下の条件での心機能変化における役割について検討した。 大動脈縮窄モデルの作成 圧負荷肥大心のモデルである大動脈縮窄マウスを作成し、nectin-2ノックアウトマウスと野生型マウスとの比較を行った。4週間後に心機能、心臓組織の変化について検討したところ、手術群で心肥大(心エコー、心重量、組織による評価)は同程度であったが、野生型に比しnectin-2ノックアウトマウスにおいて以下の特徴が認められた。(1)著明な心収縮能低下、肺重量の増加を認め、左心不全を呈していた。(2)光学顕微鏡では心臓内の著明な間質繊維化を、電子顕微鏡にて介在板の拡張型心筋症様変化と、そこに連なる筋原繊維の構造破壊を認めた。(3)心臓組織を用いたウエスタンブロッティングにより、シグナル伝達の異常が認められた。すなわち、MAPK(p38、ERK)の圧負荷に対するリン酸化亢進反応が低下していた。(4)real time PCR法を用いたmRNA定量でTGF-βは明らかな変化を認めなかったが、collagen1が著明増加していた。以上の実験結果より、nectin-2が左室圧負荷下での介在板の機能構造保持、線維化抑制、細胞内シグナル伝達に重要な役割を担い、心機能保持に必須な分子であることが示唆された。 MLPとのダブルノックアウトマウスの作成 拡張型心筋症類似の心不全を呈するMLPノックアウトマウスにnectin-2ノックアウトマウスを交配し、ダブルノックアウトを作成中である。MLP(-/-)・nectin-2(+/-)同士で交配し、数匹の子を得たが、MLP(-/-)・nectin-2(-/-)は誕生しておらず、さらなる検討が必要であるが、MLP(-/-)・nectin-2(-/-)の胎生致死の可能性がある。その場合、胎生期での心臓発育の評価を行う予定である。
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