研究課題
1.研究の背景申請者らは単球走化性促進因子(MCP-1)の抑制、あるいはその受容体(CCR2)欠損マウスを用いて、動脈硬化の分子機構にMCP-1・CCR2経路が中心的役割を果たすことを明らかにしてきた。この研究成果を動脈硬化の新規治療法の研究開発として臨床応用を進めるために、ナノDDSに注目した。2.研究目的本研究の目的は、以下の2点である:1)ナノテク・ドラッグ・デリバリー・システム(ナノDDS)の創製:生体吸収性高分子ポリマー製のナノ粒子を用いて白血球(特に単球)あるいは動脈硬化性病変に遺伝子あるいは人工核酸を局所送達するシステムを創製する。2)ナノテクDDSによる動脈硬化性病変の抑制:ナノテクDDS(ナノ粒子)による選択的MCP-1・CCR2抑制によって動脈硬化性病変が抑制されることを明らかにする。3.研究成果1.siRNA封入ナノ粒子による選択的MCP-1・CCR2発現抑制1)ナノ粒子の作製:生体吸収性ナノ粒子(粒径200nmのPLGAナノ粒子と粒径40nmのポリエチレングリコール(PEG)付加PLGAナノ粒子(PEG-PLGA)の2種類)を作製し、MCP-1ならびにCCR2発現を特異的に抑制するsiRNAを封入した。2)マーカーあるいはsiRNA封入PLGAナノ粒子の細胞内送達と生物学的作用の評価:培養単球細胞にマーカー(FITC)封入PLGAナノ粒子あるいはPEG-PLGAナノ粒子を加えると30分以内に、ほぼ99%の細胞に貪食されること、MCP-1あるいはCCR2特異的siRNA導入によって単球のMCP-1・CCR2発現が特異的に抑制され遊走能が抑制されること、を明らかにした。また、マウスにPLGAナノ粒子を静脈内投与した場合には白血球に比較的選択的に送達されること、PEG-PLGAナノ粒子を用いた場合には活動性の高い(血管透過性の亢進している)動脈硬化病変部位に送達されることも確認した。2.動物モデル1)血管傷害後新生内膜形成モデル:高コレステロール食負荷ウサギのバルーン傷害モデル、ステント拡張モデルにおいて、siRNA封入PLGAナノ粒子あるいはPEG-PLGAナノ粒子を局所投与すると、ナノ粒子が高率に血管壁細胞(90%以上)に導入されることを確認した。
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