本研究の目的は、皮膚科臨床で実地応用されている紫外線療法が、他に有効な治療法のない重症虚血肢に対する新しい血管新生療法として有用か否かについて明らかにすることである。昨年度に引き続き研究代表者を中心にマウスの重症虚血肢モデルの確立作業を中心に実験検討を行った。 従来の大腿動脈結さつ除去によって作成されたマウス下肢虚血モデルにおいては、臨床で経験される重症虚血肢症例のような、組織壊死や潰瘍形成などの所見が得にくいなどの問題点があり、より臨床像に近いモデルが必要とされていた。そこで我々は結さつ部位をより中枢側に置いた広範囲虚血肢を作成。これにより比較的臨床像に近い病態を示すモデルを開発することに成功した。 同モデルを用いて、下肢切断率、潰瘍形成率、レーザードップラーを用いた血流回復の評価、マイクロソフェアを用いた血流量半定量、ならびに血管新生評価のための免疫組織学的微小血管数定量など基礎的データを収集し、これら基礎的データをもとに、同モデルを用いて紫外線照射の効果を検討したが、紫外線照射による効果は個体差が大きく、現在のところ一定の傾向が得られていない。本年度はさらにデータ解析を試みたが、今後照射量や照射法などさらなる条件調節が必要と考えられる。 また、血管新生の分子生物学的機序を明らかにするため、培養血管内費細胞ならびに骨髄由来幹細胞において、今後皮膚科基礎研究領域で行われるUV irradiatorを用いた紫外線照射法を用い、アンジオテンシン系の細胞内情報伝達機構に及ぼす影響について、主に活性酸素種を介した側面からアプローチした実験検討を行って行きたいと考えている。
|