虚血性心疾患、特に心筋梗塞後の代償機転として生じる心臓リモデリングは結果として梗塞部の菲薄、伸展、心内腔拡大と非梗塞部の肥大から成り、時間結過とともに心機能低下していく。心筋梗塞モデル動物において細胞移植が心臓リモデリング抑制に効果がることが報告されているが、梗塞部周辺での血管新生誘導が明らかとなっており、抑制メカニズムのひとつとして注目されている。我々は以前に、IQGAPが血管内皮細胞において血管内皮生長因子受容体2型に結合し、活性酸素種(ROS)依存性の細胞遊走・増殖・ROS生産にかかわり、血管新生を抑制することを報告した。今回我々は、この実験係を利用し、血管平滑筋細胞・心筋細胞におけるIQGAP1のはたらきを検討した。IQGAP1は血管内皮細胞および心筋細胞に発現し、頚動脈バルーン障害動脈硬化モデルおよびアンジオテンシンII接続投与マウスにおいて、血管および心臓にそれぞれ高発見を認めた。血管平滑筋細胞においてIQGAP1は血小板由来生長因子受容体と結合し、そのリン酸化を制御していることが明らかとなった。IQGAP1過剰発見により血小板由来生長因子刺激による血管平滑筋細胞の遊走・増殖・ROS生産は増加し、IQGAP1ノックダウンによりこれらの抑制が可能であった。これらのことから、IQGAP1はROS生産調節作用を介して、動脈硬化を主体とする虚血性心疾患の進展に関与していることが示唆された。
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