研究概要 |
ラット心筋梗塞モデル群及びsham群を作成し、High mobility group box-1(HMGB1)の発現をreal time RT-PCR法を用いて検討した。HMGB1 mRNAは梗塞後24時間後より梗塞部で発現亢進を認め、3日後にピークを認め(sham群に比して5倍の発現亢進;p<0.05)、14日後でも発現亢進が遷延していることを確認した。引き続きWestern blotting法及び免疫組織染色を用いて検討し、HMGB1発現が同様の経時的変化をすることを明らかにした。発現の局在としては、壊死あるいは変性した心筋細胞や浸潤した炎症性細胞などであることを確認した。HMGB1のreceptorであるRAGE及びToll-like receptor(TLR)2及び4の発現もWestern blotting法を用いて検討したところ、いずれも急性期梗塞部で発現が亢進していた。 続いてHMGB1の中和抗体投与群(1mg/dayを梗塞後24時間後より7日まで連日投与)を作成した。心臓エコーや血行動態評価はn=5の段階では統計学的有意差はないが、中和抗体投与モデルで左室リモデリングが増悪する傾向を認めた。中和抗体投与が、梗塞部で発現亢進するTNF-α、IL-1β、HMGB1などの炎症性サイトカインの発現を有意に軽減することを確認した(梗塞後3日;-40% p<0.05,-31% p<0.05,-40% p<0.05、梗塞後7日;-44% p<0.05,31% p<0.05,-34% p<0.05)。また中和抗体投与群では梗塞部へのマクロファージ(CD68)の浸潤が低下していることを明らかにした。 次年度には、中和抗体投与モデルのnを増やして左室リモデリングに対する影響を判断する。またHMGB1の中和抗体により抑制された梗塞後炎症反応が、線維化、肥大、血管新生などにどのように影響するかについても検討する。
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