研究課題
一酸化窒素(NO)合成酵素(NOS)には、内皮型NOS(eNOS)、誘導型NOS(iNOS)、神経型NOS(nNOS)の3種類のアイソフォームが存在する。研究代表者は、過去に、eNOSやiNOSに加えて、nNOSも重要な血管保護作用を有することを見出した(FASEB J 2002)。しかし、抗動脈硬化機構におけるNOSシステム全体の意義は不明である。この点を検討するために、研究代表者は、3つのNOSsをすべて欠失させたNOSシステム完全欠損マウス(トリプルn/i/eNOSs欠損マウス)を世界に先駆けて創出した(PNAS2005)。本研究では、このマウスにおける血管病変形成を検討した。2ケ月齢のオスのマウスを実験に使用した。血管病変形成の程度は、Masson-trichrome染色及びhematoxylin-eosin染色により評価した。マウスの一側の頚動脈を結紮し血流を途絶すると、2週間後には、結紮近位部頸動脈に、新生内膜と収縮性血管リモデリングが形成された。しかし、これらの病変形成の程度はいずれも、野生型マウスに比してトリプルNOSs欠損マウスで有意に増悪していた。新生内膜形成の増悪は、nNOS欠損マウス及びeNOS欠損マウスにも認められ、また、収縮性血管リモデリングの増悪は、nNOS欠損マウス及びiNOS欠損マウスにも見出されたが、重要なことに、これらの病変形成の程度はトリプルNOSs欠損マウスで最大であった。以上より、NOSシステムが、協調的な各NOSの相互作用を介して、重要な血管保護作用を発揮していることを初めて明らかにした。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Arteriosclerosis, Thrombosos, and Vascular Biology 27
ページ: 92-98
薬学雑誌 127
ページ: 1347-1355