研究課題
本研究の目的は、自己免疫性心筋炎・拡張型心筋症の新たな動物モデルを用いて病態を解析すると共に、近年様々な炎症性病変や組織破壊への関与が報告されているマトリクス・メタロプロテアーゼ(MMP)の心筋炎発症機序における役割を解析することである。更に、MMPの作用を特異的に阻害することにより、疾患の進行を抑制することを目指す。この目的を達成するために、1)よりヒト疾患に類似した動物モデルの作製、2)心筋炎・拡張型心筋症の発症及び進行におけるMMP発現動態の解析、3)MMP発現細胞の同定、4)MMPを標的とした治療法の開発、の4点に重点を置き研究を進める。18年度は、心筋C蛋白の組換え蛋白をラットに免疫することにより、重症の自己免疫性心筋炎を誘発し、更に拡張型心筋症へ移行する動物モデルを作製した。病態の各進行時期におけるMMP発現を遺伝子及び蛋白レベルで定量解析した結果、発症初期の心筋組織においてMMP-9遺伝子及びゼラチナーゼ(MMP-2、MMP-9)活性の上昇が認められた。更に、重症度の異なる二つの心筋炎モデルを作製し両者を比較すると、疾患の重症度とMMP発現量の間に相関が見られた。これらの知見から、MMP分子が自己免疫性心筋炎・拡張型心筋症の発症機序において、重要な役割を果たしていることが示唆された。今後は、免疫組織科学染色や磁気細胞分離装置、レーザーマイクロダイセクションなどの手法を用いてMMP発現細胞の同定を予定している。更に、同定した細胞或いはMMP分子を標的とした特異免疫療法の開発について検討を進めたい。
すべて 2007 2006
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