研究概要 |
本研究の目的は,自己免疫性心筋炎・拡張型心筋症の新たな動物モデルを用いて病態を解析すると共に,近年様々な炎症性病変や組織破壊への関与が報告されているマトリクス・メタロプロテアーゼ(MMP)の心筋炎発症機序における役割を解析することである.更に,MMPの作用を特異的に阻害することにより,疾患の進行を抑制することを目指す.この目的を達成するために,1)よりヒト疾患に類似した動物モデルの作製,2)心筋炎・拡張型心筋症の発症及び進行におけるMMP発現動態の解析,3)MMP発現細胞の同定,4)MMPを標的とした治療法の開発,の4点に重点を置き研究を進めてきた. 前年度までに,自己免疫性心筋炎・拡張型心筋症の発症機序におけるMMP分子の重要性を明らかにしたことから,19年度は,免疫組織科学染色,in situ zymography, gelatin zymographyを組み合わせてMMP産生細胞の同定を行った.その結果,炎症期の心臓では主にマクロファージがMMP-9を,慢性期では心筋細胞がMMP-2を発現していることが,疾患の進行に深く関与していることが示唆された. 心筋炎を誘発したラットへのミノサイクリン投与によるMMP-9標的治療実験の結果,炎症期に本分子を抑制すると,心筋炎が顕著に軽症化するという結果を得た.現在,MMP-2の役割を検討するため,選択的阻害剤の投与による治療実験を進めている.両分子の作用を明らかにし,今後,RNAiなどを利用した特異的阻害剤を創製することにより,本疾患を早期に抑制する治療法の開発が期待される.
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