肺胞マクロファージの分化・活性化における転写因子PU.1の役割を明らかにするため、まず、顆粒球・単球コロニー刺激因子(GM-CSF)ノックアウトマウス由来の肺胞マクロファージ細胞株(mAM)を研究に用いた。GM-CSFノックアウトマウスは肺胞蛋白症類似の病像を呈し、AMの自然免疫能が低下していることが知られている。mAMにおけるPU.1の遺伝子発現レベルをreal time PCRで検討したところ、コントロールの肺胞マクロファージに比べて、著しく発現レベルが低下していた。この結果は気管支肺胞洗浄により回収したGM-CSFノックアウトマウスの肺胞マクロファージを用いた実験結果と同様の傾向であった。また、mAMでは単球コロニー刺激因子(M-CSF)の発現や産生が亢進していた。 さらにPU.1自身の役割を明確にするために、我々はRNA interference (RNAi)の手法を用いて、分化したマクロファージのPU.1をノックダウンした。すなわちマウスマクロファージ細胞株RAW264.7へのPU.1 siRNA導入細胞を確立している。引き続いてこの細胞を用いてreal time PCRにより種々の遺伝子発現解析を検討している。現在はマクロファージから産生されるサイトカイン(例えばTNF-αやIL-1β、IL-6、IL-8、IL-10など)あるいはマクロファージの分化に重要な他の転写因子群(例えばICSBPやMafBなど)について、それぞれのPCRプライマーを設計し、各々の反応条件を検討しているところである。同時にこれらのサイトカインや転写因子に対するELISAやWestern blottingについて、それぞれ実験条件の最適化を進めている。
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