研究概要 |
我々の研究の目的は、フォリスタチンを用いての肺線維症の治療にある。そのため平成19年度は、ヒトの臨床検体を用いての実験に多くの時間を使ってきた。 (1)ヒト急性肺障害におけるアクチビン、フォリスタチン、アクチビン受容体、核内転写因子などの局在の解明 びまん性肺障害、膠原病肺、薬剤性肺炎、顕微鏡的多発血管炎、特発性肺線維症の急性増悪などの疾患群における、剖検肺や切除肺を用いた免疫染色を行った。アクチビン、フォリスタチンは肺胞マクロファージに強く発現が見られ、一方でアクチビン受容体は肺胞上皮細胞や細気管支上皮細胞、マクロファージ、線維芽細胞など、病巣におけるさまざまな細胞に発現が見られた。 (2)ヒト急性肺障害におけるマイクロサンプリングを用いた、細気管支上皮被覆液におけるアクチビン、フォリスタチンの濃度の測定 これは新規発症の急性肺障害例が多くなかったために検体数は少なかった。しかしながら、ELISAによる検討では、健常者コントロール群との比較において、急性肺障害群においては優位に局所の粘液中にアクチビン、フォリスタチンの濃度が高いことが判明しており、アクチビン・フォリスタチンの局所における発現が亢進していることが証拠付けられた。 (3)マクロファージからの線維化促進性ケモカイン分泌測定 現在、ヒト・マクロファージを用いた検討を行っているところで、予備実験の段階ではあるものの、マクロファージの培養液中にアクチビンを添加すると、培養上清中にcCXCL4,CXCL12,CCL2などのサイトカインの増加が見られることが判明している。
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