KRAS変異陽性非小細胞肺癌にて、RNA干渉ベクターを用い、変異型KRASのみを特異的に抑制して細胞増殖や生存を抑制するか調べ、KRAS変異が非小細胞肺癌の悪性形質の維持に必要であるか検証することを目的とした。KRAS遺伝子変異に相補的なsiRNAを産生するRNA干渉ベクターを作製し、変異型KRAS陽性の4つの非小細胞肺癌細胞株にてKRAS発現が抑制される事を確認した。MTTアッセイでは全細胞にて細胞増殖の抑制を認め、寒天培地でのコロニーフォーメーションアッセイではコロニー形成能が80〜90%抑制された。以上よりKRAS変異が非小細胞肺癌の悪性形質の維持に重要な役割を果たすと考えられた。さらにRNA干渉による変異型RASの発現抑制がRAS下流シグナル伝達に与える影響を調べることを目的として、KRAS発現抑制が遺伝子発現プロファイルに与える影響をmicroarrayにより解析したところ、各々4つの非小細胞肺癌細胞株において280から330までの遺伝子の発現が有意に変化することがわかった。現在はmicroarrayにて同定された遺伝子群の情報から、パスウェイ解析や各々の遺伝子について機能解析をすすめている。その他実績として下記の報告をした。肺癌においてRAS関連遺伝子であるRASSF2の発現及びプロモーターメチル化の解析を行い、RASSF2のメチル化による発現抑制や、非喫煙者の非小細胞肺癌患者において有意にメチル化の頻度が高い事を報告した。EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者に対するEGFRチロシンキナーゼ阻害剤ゲフィチニブの有用性を検証する第二相試験を行い、奏功率76%、無増悪生存期間中央値12.9ケ月と高い有用性を報告し、一方でFDP-PET検査をゲフィチニブ治療開始初期に行い、SUV値の変化がゲフィチニブの治療効果の早期予測に有用である可能性を報告した。
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