プロテインチップシステム・プロテオミクスを用い、呼吸器感染症のうち、特に難治性である肺アスペルギルス症について、早期に原因菌由来の特異タンパク質を検出・同定し、臨床的に応用できる診断系を確立することが研究目的である。 実験計画は、(1)動物感染モデル(感染群と非感染群)からのサンプル収集→(2)臨床プロテオミクス(タンパク質のプロファイリング)→(3)診断マーカーとしての評価(臨床検体での検討・評価とタンパク質の選定・同定)→(4)抗体の作成とELISA法の確立→(5)臨床検体での再評価(他の診断法との比較・検討(特異度、感度など)と5つのパートに分けて遂行する予定で、平成18年度内に動物実験でのサンプル収集ならびにプロテインチップシステムを用いたプロテオミクス解析、抗体作成とELISA法の確立を終了する予定であった。 マウスの肺アスペルギルス感染モデルでの検討と平行し、アスペルギルス菌由来のタンパク抽出、並びに、実際の患者血清、健常人の血清を用いたタンパクのプロファイリングと比較も行った。実際の患者血清での検討において、アスペルギルス感染患者の血清にのみ認められ、健常人には認められず、かつ、アスペルギルス抽出タンパクにも認められる特異タンパクのピークを複数発見できた。アスペルギルス属の菌種による差異や、他の病原微生物の菌由来の抽出タンパクとの比較も併せて検討し、候補となるタンパク(分子量:8600m/z)がアスペルギルス由来の特異抗原である可能性が高いことが示された。現在、ポリアクリルアミドゲルを用いた二次元電気泳動法、peptide mass fingerprint法、アミノ酸シークエンスを行い、本タンパクの精製と同定を進めている。平成19年度は、本タンパクに対する抗体を作成し、臨床検体での評価、ならびにELISA法による迅速診断キットへ発展させる予定である。
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