抗癌剤の薬剤耐性機構の一つにATP依存性の薬剤排出ポンプの過剰発現がある。このポンプの-つであるBreast Cancer Resistant Protein(BCRP)はトポイソメラーゼI阻害薬などの排出を行う。非小細胞肺癌細胞株を用いた研究にて、BCRPの発現がirinotecan活性物質SN-38やtopotecanなどのトポイソメラーゼI阻害薬への感受性と強い相関があることを、研究協力者が報告した。また、脱メチル化薬5-aza-deoxycytidineにて、BCRP非発現肺癌細胞株にてBCRP mRNAおよびBCRP蛋白が発現誘導され、フローサイトメトリー解析にて、この発現されBCRP蛋白が薬剤排出ポンプとして機能していることを確認した。また、SN-38感受性肺癌株ではBCRPのプロモーター領域のCpG配列のシトシンがメチル化されていたが、SN-38耐性肺癌株では非メチル化されていた。非小細胞肺癌細胞株では、Methylation-specific PCRの結果とBCRP mRNAとBCRP蛋白発現の結果は一致していた。このように、臨床検体を用いたMethylation-specific PCRによるメチル化解析がトポイソメラーゼI阻害薬の効果予測に使用できることが示唆され、現在、術後再発肺癌症例に対して、手術時切除組織のmicrodissection後にMethylation-specific PCRによるメチル化解析を行うとともに、白金製剤とirinotecan併用後の効果を見ている。本年度は6例の症例を登録し、そのメチル化解析を行うと共に現在はその予後の経過観察中である。
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