本年度はまずHPLC/ECD法による3-ニトロタイロシンの定量化のため標準曲線と検出感度を測定した。その結果retention timeは13.5分、検出感度は10fmolであり、1000fmolまでの直線性も確認した。さらに、実際の検体の3-ニトロタイロシン量も100fmolまでで、この標準曲線の範疇に入ることを確認した。同時にHPLC/ECD法によるタイロシンのretention timeが5.35分で、0.1〜10μmolの範囲で標準曲線が作成できることを確認した。次に喀痰中の蛋白結合3-ニトロタイロシン量測定に及ぼす唾液の影響を検討するため、COPD患者の検体を用いて唾液中の3-ニトロタイロシン量をHPLC/ECD法によりそれぞれ測定した。その結果、唾液の影響は僅少であり、気道・肺の窒素化ストレスマーカーとして喀痰中の蛋白結合3-ニトロタイロシンの発現量を測定する妥当性を得た。次にCOPD患者、および呼吸機能正常喫煙者の誘発喀痰を採取し、HPLC/ECD法により3-ニトロタイロシンおよびタイロシンを測定した。その結果呼吸機能正常喫煙者に比較し、COPD患者は有意に3-ニトロタイロシン量および3-ニトロタイロシン/タイロシン比が増大し、気道の閉塞性障害の程度と有意な逆相関を示した。以上よりHPLC/ECD法を用いた喀痰中の蛋白結合3-ニトロタイロシン測定は窒素化ストレスの定量法として有益で、さらに気道・肺における窒素化ストレスの産生亢進がCOPDの発症や進展に関与している可能性が示唆された。
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