研究概要 |
昨年度,1.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に電気化学検出(ECD)を組み合わせた方法を用いた喀痰中の蛋白結合3-ニトロタイロシンの測定は窒素化ストレスの定量法として有益であること(∵3-ニトロタイロシンの検出感度が高く《10fmolまで測定可能》,喀痰中の蛋白結合3-ニトロタイロシン量測定は唾液の影響を受けにくいため) 2.気道・肺における窒素化ストレスの産生亢進がCOPDの発症や進展に関与していること(∵COPD患者の気道中の3-ニトロタイロシン量が気道の閉塞性障害の程度と有意な逆相関を示したため)以上の2点を示した。本年度はこの結果に基づいて,実際に人において窒素化ストレスの制御がCOPDの気道炎症を改善すると仮定し,クロスオーバースタイルにてCOPD患者にテオフィリンを投与し,検討を行った。窒素化ストレスの測定に関して,誘発喀痰の細胞成分を用いた従来の免疫組織学的な検討に加え,喀痰の上清成分を用いた上述のHPLC/ECD法による,定量的な検討もあわせて行った。さらに肺機能,気道の炎症性マーカーであるIL-8測定も合わせて施行した。現在症例を集積中であるが,テオフィリン投与群では,気道中の活性窒素種産生量が減少し,好中球性の気道炎症が抑制される傾向であり,同薬剤がCOPDの新たな抗炎症薬となる可能性があり,引き続き検討する予定である。
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