研究概要 |
平成18年度に作成した誤嚥性肺炎モデルを用いて平成19年度は抗炎症性脂質メディエーター安定型化合物のひとつであるレゾルビンE1(RvE1)を投与し,肺障害後の防御機構に与える影響について検討した。結果RvE1投与群では非投与群に比べ塩酸投与後の肺内における大腸菌の増殖を抑制、MPO濃度、IL-1β, IL-6, KC, MCP-1, MIP-1α, MIP-1βの産生が抑制されたことを報告した。その後更なる検討の結果、炎症後期に出現する炎症性メディエーターであるHMGB1もRvE1投与群で抑制されることが明らかになった。またRvE1の前躯体であるEPA(エイコサペンタエン酸)を投与し塩酸投与後の大腸菌増殖に与える影響について検討したが、EPAは大腸菌増殖を抑制しなかった。これらの結果からRvE1は誤嚥性肺炎モデルの増悪を改善する可能性が示唆された。今回塩酸障害前にRvE1を投与することによってこのような結果が得られたことから、次に申請者はRvE1投与が塩酸肺障害に対する影響について検討した。この結果気管支肺胞洗浄液(BAL)中のマクロファージ数には影響は与えなかったが、好中球数を有意に抑制した。更に誤嚥性肺炎後の生存率を検討したところRvE1投与群は非投与群に比べ明らかに生存率を改善した。以上から誤嚥性肺炎においてRvE1の予防的投与は炎症の助長を防ぎ予後を改善する可能性が示唆された。
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