研究課題
ノカルジア唯一のゲノム決定株であるN.farcinica IFM 10152は、気管支由来の臨床分離株であり、本研究はノカルジアの宿主細胞感染に関与する因子の同定を目的としている。当該年度は、培養細胞を用いた感染実験系の確立等の基礎的検討を行った。(1)マウスマクロファージ様細胞J774.1細胞への感染実験を行なった。コントロールとして増殖測度の類似したノカルジア類縁ロドコッカス属のうち病原性を示さないR.rhodochrous NBRC 6068株、ノカルジア病原性のコントロールとして以前に報告されているN.cyriacigeorgica IFM 0688株を用いた。各菌株の細胞内での生存数を48時間まで検討した結果、ロドコッカスの生存数は細胞感染後から速やかに減少した。一方、本菌は感染直後に他の菌の数倍の生存数を示し、感染後1時間までは増加したが、その後、徐々に減少した。0688株は初期感染時に細胞内に存在する菌数は多くはないものの、生存数は経時的に増加傾向を示した。さらに、ノカルジア2株の感染細胞には細胞死が認められたが、ロドコッカス感染細胞には認められなかった。現在、その詳細を解析中である。(2)本菌には、結核菌の抗原蛋白質であるAg85ファミリーのホモログ遺伝子が14種類存在する。ノカルジアのこれらの遺伝子のうち、発現量の高い3株について、遺伝子破壊株を作製した。現在、これらについて病原性との関連を検討している。(3)本菌を蛍光可視化するために、染色体上に3組あるrrn遺伝子のうち16SrrnC上へのgfp遺伝子の導入を試みたが、組換え体の取得には至っていない。現在、本研究室で新たに作製したノカルジアー大腸菌シャトルベクターpNV19を用い、ノカルジア内で十分な発現が得られるようなプロモーターの検討を行なっている。
すべて 2007
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Jpn. J. Infect. Dis. 60
ページ: 45-47