研究概要 |
ノカルジア唯一のゲノム決定株であるN.farcinica IFM 10152は,気管支炎患者由来の臨床分離株であり,本研究はノカルジアの宿主細胞感染に関与する因子の同定を目的としている。本年度は,1.マイクロアレイを用いたノカルジア感染マクロファージの遺伝子発現変化の検討2.ノカルジアの病原性への関与が予想されるシデロフオア(nocobactin)生合成遺伝子破壊株を作成し,マクロファージ細胞への感染実験を行なった。 1.ノカルジアN.farcinica IFM 10152を感染させたマウスマクロファージ様細胞J774A.1の遺伝子変化を感染後1時間から24時間まで経時的に検討した。マイクロアレイはAgilent社GEカタログアレイwhole mouse genome(41,534転写産物)を用いた。その結果,炎症系サイトカイン誘導関連,ケモカイン関連,細胞死関連遺伝子等の発現変化が認められた。 2.ノカルジア野生株とnocobactin生合成遺伝子の破壊株であるΔnbtA,ΔnbtEおよびΔnbtSをJ774A.1細胞に感染させた。その結果,感染24時間後に野生株は細胞死をもたらしたが,ΔnbtAおよびΔnbtSの殺細胞活性は減少し,ΔnbtEの殺細胞活性は消失した。さらに,破壊した遺伝子の相補株の殺細胞活性は野生株と同等までに回復したことから,nocobactinはN.farcinicaの病原性に関与していることが示唆された。
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