研究概要 |
糖尿病例や末期腎不全例では,動脈中膜石灰化が高度に認められるが,その原因や発症機序は未だ不明である.Klotho蛋白は,主に腎臓遠位尿細管で産生される老化調節蛋白で,Klotho遺伝子欠損マウスでは,動脈中膜の広範囲の石灰化や筋性動脈の内膜の肥厚が認められ,糖尿病や腎不全症例での血管病変と病理組織学的特徴が似ている. 我々は,糖尿病性腎症例(DMN)における腎臓でのKlotho蛋白発現について検討した.対象は当教室で腎生検を施行したDMN28例である.腎凍結標本よりmRNAを抽出し,real-time PCR法を用いてKlotho mRNA発現を定量的に解析した.また免疫組織学的手法でも腎臓でのKlotho発現について検討した.その結果,腎機能の低下とともに有意にKlotho発現が低下していた.また腎糸球体病変の増悪や細動脈病変の進行に伴い有意にKlotho発現が低下することが分かった.さらに,腎機能や年齢を適合したIgA腎症例(IgAGN)22例におけるKlotho発現について比較検討したところ,DMNではIgAGNに比し有意にKlotho発現が低下していることが明らかとなった.一方,糖尿病モデルでの腎臓は、早期段階から組織の低酸素が起こることが報告されている.そこで,低酸素がKlotho発現に及ぼす影響について検討した.C57BL/6Jマウスの腎臓より尿細管上皮細胞を初代培養し,培養開始後4日目より1%O2下で培養した.その後mRNAを抽出,をreal-time PCR法でKlotho発現を定量的に解析した.その結果,低酸素下ではKlotho発現は有意に低下した.DMNでは,早期より腎臓でのKlotho発現は低下し,それに低酸素が関与する可能性が示唆された.
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