昨年度に引き続き、アディポネクチンノックアウトマウスを用いて、腎臓におけるアディポネクチンの直接作用の有無を検討している過程で、受容体の有無及び局在を検討した。Real-timePCR法にて検討したところ、上皮細胞にアディポネクチン受容体が発現していた。 また、動物研究をもとにメタボリックシンドローム(METS)の腎障害と内皮機能異常に関して検討した。METSの診断基準を満たす患者を対象に、微量アルブミン尿(一)群、微量アルブミン尿(+)群、顕性蛋白尿群の3群にわけ、それぞれを%FMD法で測定した内皮機能、動脈硬化の程度として心臓足首血管指数(CAVI)、血清アディポネクチン濃度、及び尿中NOx、及び酸化ストレスのマーカーとして8-OHDGを測定した。微量アルブミン尿と血清アディポネクチン濃度には有意な負の相関を認めた。また、3群間で比較すると血清アディポネクチン濃度は、微量アルブミン尿(一)群と比較し、後者2群では有意に低下していた。また、後者2群間で有意な差は認めなかった。また、CAVI値に関して3群間で有意な差は認めなかったが、内皮機能に関しては、微量アルブミン尿(+)群、顕性蛋白尿群は微量アルブミン尿(一)群に対して有意に低下していた。また、内皮機能とアディポネクチン濃度には弱いながらも有意な正の相関を認めた。一方、尿中Noxに関しては3群間で有意な差はなかったが、微量アルブミン尿(+)群、顕性蛋白尿群は微量アルブミン尿(一)群に対して高値傾向を認めた。8-OHDGは微量アルブミン尿(+)群、顕性蛋白尿群は微量アルブミン尿(一)群に対して有意に高値を認めた。 以上から、METSの腎症には内皮機能障害が関与していると考えられる。また、内皮機能障害には低アディポネクチン濃度が関与していることも同時に示唆された。
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