研究概要 |
抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎症候群におけるサイトカイン動態を明らかにするため、患者と健常人血漿検体で血中TNF-α,IL-12p70,IL-12p40, IL-18, IL-23を測定し、末梢白血球数、血清CRP、クレアチニン値、腎生検での活動性半月体形成率との相関を検討した。血中TNF-α,IL-18, IL-12p40, IL-23は血管炎患者群で有意に高値を示した。IL-12p70は、患者群で健常人に比べ高い傾向があった。血管炎患者群において血中IL-18は末梢血好中球数,との間に正の相関を認めCRPとの間にも正の相関を認めた。血中IL-12p40は、腎糸球体活動性半月体形成率との間に正の相関を、血清クレアチニンとの間に正の相関を認めた。これらの結果よりANCA関連血管炎患者においてTNF-αがトリガーとなり、その後産生されるIL-18は向全身性炎症反応を引き起こし、IL-12p40は糸球体半月体形成に関与する可能性が示唆された。TNF-α, IL-12, IL-18は主にモノサイト・樹状細胞から産生され、IL-12,18は樹状細胞のIFN産生を促進するサイトカインである。派遣先のニューカッスル大学にて、CD14+モノサイト誘導の樹状細胞を産生、樹状細胞における抗原提示能、抗TNF-α抗体投与時の反応についてT細胞との共培養系にてT細胞増殖能を検討した。抗TNF-α抗体は樹状細胞のapoptosisを促進し、また樹状細胞の成熟抑制、T細胞増殖を抑制した。抗TNF-α抗体は樹状細胞からのTNF-α, IFN-γ産生抑制をもたらす一方、抗炎症性サイトカインであるIL-10の産生促進をもたらしたことより、自己免疫疾患の治療戦略として有効であると考えれた。(Ito-Ihara, et. al. Pharma Medica 25(2):173-198;2007)
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