Fisher症候群の2割で、Campylobacter jejuni腸炎が先行する。患者から分離されたC. jejuni (CF93-6株)のLOSを分析したところ、GQ1bそのものではなく、GQ1bに類似したGT1a様構造が確認された。また、C. jejuni (PG836株)はGD1c様LOSを、C. jejuni (OH4382株)はGD3様LOSを有することが明らかにされている。C. jejuni腸炎後Fisher症候群は、こうしたLOSを有するC. jejuniに感染し、交叉反応性に抗GQ1b抗体産生が誘導されて、動眼神経や1次感覚ニューロンに発現しているGQ1bに結合して、発症すると考えられている。 ギラン・バレー症候群で立証した「分子相同性」の普遍性を検証するために、GQ1bガングリオシド500μg/羽をウサギ12羽に3週ごとに計5回感作し、抗GQ1b抗体が誘導され、Fisher症候群様の神経徴候を呈するかを調べた。すべてのウサギでIgM抗GQ1b抗体が上昇し、うち1羽でIgG抗体へのクラススイッチが起こったが、発症には至らなかった。GQ1bを1mg/羽と増量し同様にしてウサギ3羽に感作したが、IgG抗GQ1b抗体は上昇せず、神経徴候も呈さなかった。さらに、カナダの共同研究者Gilbert博士から送っていただいたGQ1bとkeyhole lympet hemocyaninとの共有結合物を5羽(GQ1b 50μg/羽)に感作したが、抗GQ1b抗体は産生されなかった。増量(GQ1b 200μg/羽)して2羽に感作したが、抗GQ1b抗体は誘導されなかった。実験は中止し、これまでの一連の結果を何らかの形で論文として報告する予定である。
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