研究概要 |
重症筋無力症(MG)は発症年齢、病型、重症度、胸腺異常などの点で多様性に富んでおり、いくつかのカテゴリーへ分類可能である。抗AChR抗体以外にも、titin、ryanodine receptor、MuSKに対する抗体などの存在が報告されている。本年度の研究では、MG患者血清におけるAChR、titin、Kv1.4に対する自己抗体を測定し、その出現パターンからMGの分類を行い、臨床像との関連につき検討を行った。 対象は209例(男性81例、女性128例)のMG患者血清。抗AChR抗体はRIA、抗titin抗体はELISAによる測定を行った。抗Kv1.4抗体は、^<35>S-methonineでラベルした横紋筋肉腫細胞(RD)の細胞抽出液を用いた免疫沈降法を用いて同定した。 抗AChR抗体、抗titin抗体、抗Kv1.4抗体はそれぞれ150例(72%)、50例(24%)、26例(12%)に検出された。抗titin抗体と抗Kv1.4抗体が検出された患者はいずれも抗AChR抗体も陽性であった。これら抗体の出現パターンからanti-Kv1.4 group(n=26)、anti-titin group(n=32)、anti-AChR group(n=92)、seronegative group(n=59)の4群に分類し検討を行った。 anti-titin groupは高齢MGと、胸腺腫は、anti-Kv1.4 group、anti-titin group、anti-AChR groupの順で高率であった。病型ではseronegative groupで眼筋型が多かった。球症状とクリーゼの既往については、anti-Kv1.4 groupにおいて最も頻度が高かった。抗体測定時の各群におけるMG重症度は、anti-Kv1.4 groupが他の3群に比べ最も重症であった。また合併する自己免疫疾患については、anti-Kv1.4 groupの4例(15%)で筋炎・心筋炎を合併しており、統計学的有意差を認めた。 複数の自己抗体を測定することにより、MGの病型分類が可能であり、免疫抑制剤や拡大胸腺摘出の施行などの治療法の選択や予後判定において有用であることが示唆された(Arch Neurol,2007,in press)
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