神経幹細胞のマーカーであるMusashi1遺伝子の5'側上流には、低酸素刺激により発現する転写因子hypoxia inducible factor-1(以下HIF-1)が標的とする塩基配列(hypoxia-responsive enhancer : HRE)が存在することから、HIF-1及びMusashi1遺伝子の機能的な関連性に関する研究を行った。 本年度ではマウス海馬由来神経幹細胞を用いて、酸素濃度調節が可能な密閉チャンバー内での低酸素刺激、または安定化HIF-1発現plasmidの細胞内導入による低酸素関連因子の転写調節を定量的RT-PCRにて解析した。 低酸素関連因子であるerythropoietin、adrenomedullinにおいては、今回の実験系での密閉チャンバー低酸素刺激により10倍から100倍程度、mRNA量が上昇することが確認されたが、安定化HIF-1発現plasmidの細胞内導入ではmRNA量にほとんど変化は認められなかった。また同様の実験系における低酸素刺激とplasmid導入実験においてMusashi1のmRNA量に変化は認められなかった。 現在、安定化HIF-1の細胞内導入効率の上昇を目指し、lenti virusを用いた導入方法を検討中である。またRT-PCRによるmRNA量の解析ではmRNAの分解の影響も考慮しなくてはならないため、Musahi1の転写調節領域にレポーター遺伝子をfusionさせたplasmidを作成し、HIF-1のMusashi1に対する転写調節を直接的に検討することを計画している。
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