研究課題
【目的】NO合成酵素(NOS)の内因性阻害物質ADMA(asymmetrical dimethylarginine)は、新たな心血管病危険因子であり、DDAH(dimethylarginine dimethylaminohydrolase)により代謝される。DDAHには2つのアイソフォームDDAH1、2が存在し、血管にはDDAH2が主に発現している。我々は、DDAH2を全身に高発現するトランスジェニックマウス、DDAH2Tgマウスを作成し、DDAH2の生体での機能を検討した。【方法】DDAH2Tgマウス(TG群)と野生型(WT群)とで臓器重量、体重、血圧、血中ADMA値、肉眼的・組織学的形質差異を比較した。更にADMAを両群に持続投与し、心臓および冠動脈の組織所見・局所活性酸素レベルを検討した。【成績】TG群とWT群とで臓器重量、体重、血圧、肉眼的・組織学的形質に差がなかったが、TG群で血中ADMA値の低下を認めた。ADMA投与のWT群で生じた血中ADMA増加・冠動脈内中膜肥厚・血管周囲線維化・心臓局所酸化ストレス増加がTG群で抑制された。【結論】DDAH2過剰発現は、ADMAを代謝し、ADMAによる活性酸素産生を抑制し、ADMAによる組織レニン・アンジオテンシン系の亢進を抑制した。これらの機序で冠動脈病変は改善したと考えられた。DDAH2の生体での血管保護作用が示唆された。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件)
Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology. 26
ページ: 1488-1494