われわれは、KKマウスにおいて、Zn-α2-glycoprotein1(Azgp1)が肥満の候補遺伝子であることを同定した。この遺伝子は、末期癌の悪質液から抽出されてきた蛋白であり、その機能としては脂肪を減少させる役割があると報告されている。このことより、Azgp1は、抗肥満薬として開発できる可能性がある。これまでに、C57/BL6を樹立系統としたトランスジェニックファウンダーマウス(Tg)(雄2匹、雌1匹)を作製した。雄のTgは、精子を認めるものの不妊であり、雌は交配をさせると産子を得ることは可能であったが、約2週間程度で産子の母体環境が悪いためか系統維持が困難であった。このため、雄のファウンダーマウスは系統をC57BL/6からICRへ変更するため、体外受精(顕微受精)を行った。ICRを系統樹立としたTgに関しては、特に間題なく継代でき成長することが確認された。現在、C57BL/6に戻し交配を行っている。現在3世代目となっており、7世代まで交配を繰り返したのちに、体重・血糖などのフェノタイプを測定していく予定である。 また、肥満2型糖尿病モデルマウスであるKKAyマウスにPPARr作動薬(ピオグリタゾン^R)を投与した。RNAレベルでは、脂肪組織におけるAzgp1の発現は上昇し、逆にPAI-1やIL-6などの遺伝子発現は減弱する傾向があることが確認された。このことより、PPARγ作動薬は、Azgp1の遺伝子発現を上昇させ脂肪組織の分解を促進するとともに、炎症性サイトカインの1つでもあるIL-6の遺伝子発現を減少させインスリン抵抗性を改善することにより、糖尿病改善効果を示す可能性が示唆された。
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