研究概要 |
脂肪細胞由来ホルモン、レプチンは摂食抑制作用とは独立した骨格均等脂質代謝亢進作用を有するが、レプチンの骨格筋代謝調節作用を担う中枢メカニズムの詳細は未解明である。一方AMPキナーゼ(AMPK)は細胞内エネルギー枯渇により活性化され、エネルギー消費系を抑制、脂肪燃焼等エネルギー産生系経路を亢進させる。近年、レプチンが交感神経系を介して骨格筋AMPKを活性化し、脂肪酸酸化を促進することが示された(Minokoshi et al. Nature 2002)。本研究では、骨格筋AMPK活性を生化学的指標として、レプチンの骨格筋代謝調節作用における中枢メラノコルチン系の意義を解析した。筋収縮によるAMPKの非特異的リン酸化防止のため予めマウス脳室内、背部皮下にカニュラを留置しこれらを通して薬剤や麻酔薬の投与を行った。無麻酔非拘束下のC57BL/6マウスへの3型/4型メラノコルチン受容体(MC3/4R)作働薬MT-IIの脳室内投与(ICV)は、骨格筋におけるAMPKおよびその標的、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)のリン酸化を有意に増加させた(リン酸化AMPKα/AMPKα比:69±19%増加 P<0.05,リン酸化ACC:90±28%増加 P<0.05,n=7)。一方、レプチンICVによるAMPK、ACCのリン酸化の亢進はMC3/4R拮抗薬SHU9119のICV共投与や、内因性MC3/4R拮抗物質Agouti蛋白を中枢神経系に異所性に発現するAyマウスにおいて減弱が認められた。以上より、レプチン-骨格筋AMPKシステムの少なくとも一部が中枢メラノコルチン系を介することが示された。次年度には、レプチンの骨格筋AMPK活性化作用が減弱したレプチン抵抗性モデルマウス(Tanaka et al. Diabetes 2005)を用いて、中枢メラノコルチン系の治療的意義を明らかにする。
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