1.ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSCs)は転写因子SF-1/Ad4BPの導入によってステロイド産生細胞へ分化することを明らかにした。SF-1/Ad4P導入hMSCsではSF-1/Ad4BP導入マウスMSCs(mMSCs)と同様にP450sccをはじめとする一連のステロイド合成酵素群(CYP11B2以外)の発現誘導を認めた。また、培養上清中にプロゲステロン、コルチゾール、テストステロンなど多様なステロイドホルモンを産生したが、ともにアルドステロン産生は認めなかった。一方、SF-1/Ad4BP導入hMSCsはCYP19A1mRNAの発現を認め、培養上清中にエストラジオールを産生した、SF-1/Ad4BP導入hMSCsはACTH受容体およびLH受容体の発現が誘導され、コルチゾールおよびテストステロン産生性はACTHまたはhCG刺激によって亢進したなど、ヒトとマウスとの相違点も明らかになった。 2.副腎・性腺分化に関与することが報告されているwt1、DAX1、SF-1/Ad4BP、PBX1、CITED2、WNT4、SRY、SOX9についてhMSCsの分化に及ぼす影響を検討した結果、SF-1/Ad4BP導入細胞のみがステロイド産生性を示した。これより、hMSCsのステロイド産生細胞への分化にはSF-1/Ad4BPが必須であることが示唆された。 3.SF-1/Ad4BPによる分化誘導時に発現量が変化した遺伝子のうち数種についてsiRNAによる発現阻害実験を行った結果、INHBB、CLCA2、GRAMD1Bとステロイド産生細胞への分化との関与が示唆された。これらの因子とステロイド産生細胞への分化機序との関わりを今後明らかにする。
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