甲状腺癌幹細胞単離のため、side population (SP)法に引き続き、ABCG2、CD133、CD44等の表面抗原による分離、さらにはaldefluorを用いた方法を試みた。しかしながら、いずれもSP法を超える精度はなく、これら方法の組み合わせによっても十分なものとは言えなかった。 甲状腺癌細胞株を特殊な培地と低接着培養皿で培養することにより、細胞をスフェロイド状に増殖させ、この細胞集団が高率にSP細胞を含んでいることが判明した。しかしながらこの方法でも、癌幹細胞のみを選択的に増殖させることが出来る訳ではなかった。 平成18年度の研究実績と併せると、当初の目的であった甲状腺癌細胞株でのSP細胞の単離に成功し、その解析は十分に終了したと言える。解析結果より、甲状腺癌幹細胞の存在が示唆されたものの、同時に細胞株を用いた研究の限界、制限もある程度理解できた。よって、動物実験や臨床検体を用いた研究を進める必要があると考えられる。癌幹細胞の存在が示唆されたことより、発癌のメカニズム、新たな治療方法の開発のためにも、さらなる当該分野の研究が必要であると考えられた。 そこで、当研究は正常甲状腺組織における正常甲状腺幹細胞の同定、分離に焦点を移し、マウス正常甲状腺組織中のわずかなABCG2陽性細胞の同定に成功し、これは正常甲状腺組織中の甲状腺幹細胞の存在を示唆させた。今後、正常甲状腺幹細胞の分離、培養法の開発とその細胞の詳細な解析が必要であると考えられる。
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