ミネラルコルチコイド受容体(MR)は電解質バランスにかかわるアルドステロン依存性の転写因子であるが、近年、心臓や腎臓といった臓器の肥大線維化にもかかわることが判明し、その転写調節メカニズムの解明が必須となっていた。Ubc9は蛋白のSUMO化修飾に関わるE2酵素であることが知られていたが、今回MRとUbc9の相互作用につき検討をおこなった。Yeast two hybrid法、GST pull-down法、哺乳類培養細胞を用いた免疫共沈降法の検討から、Ubc9はMRのN末端に結合することがわかった。そして、3種類のMR応答レポーターを用いてルシフェラーゼアッセイを施行したところ、いずれにおいてもUbc9はMRの転写を増強することがわかった。またsiRNAを用いて内因性のUbc9をノックダウンしたところ、MR転写活性は減少し、MR標的遺伝子のひとつであるsgkのmRNAも減少した。以上から、Ubc9はMRと結合しその転写活性を増強する新規のcoactivatorであることが明らかとなった。さらにそのメカニズムとして、MRのAF2 coactivatorであるSRC1との複合体形成が示唆された。MR標的遺伝子のENaC promotorを用いたChIP assayで、MR、Ubc9、SRC1はアルドステロン依存性にpromotorに結合することが示され、培養細胞の共焦点レーザー顕微鏡での検討やマウスの腎尿細管細胞での検討から、これらの蛋白は標的細胞の核に共局在することが明らかとなり、生理的に重要な役割を担っていることが示唆された。
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