1.トランスジェニックマウスを用いてAd4BP/SF-1遺伝子の生殖腺特異的な転写調節領域を探索した結果、転写開始点の約5kb上流に胎児型Leydig細胞に特異的な発現を誘導する活性を持つDNA断片を同定した。この断片によって誘導されるLacZの発現は胎齢13.5日以降のオス生殖腺の間質に認められ、Leydig細胞のマーカーである3beta-HSDとの二重免疫染色によりLeydig細胞に特異的な発現であることを証明した。興味深いことに、このエンハンサーは胎児型のLeydig細胞のみで機能を発揮し、成獣型のLeydig細胞においては活性を示さなかった。今後、エンハンサー領域の塩基配列を詳細に解析することにより、Leydig細胞の分化メカニズムを遺伝子の発現調節機構という観点から理解することが可能になると予想される。 2.脳下垂体に関しては、既に我々が同定しているエンハンサー領域の解析から、bicoid-related homeoproteinに分類されるPitx2がエンハンサーとの結合を介して直接的にAd4BP/SF-1の転写を活性化していることが証明され、Molecular Endocrinology誌に投稿した。さらに、Pitx2結合配列以外にも、このエンハンサーの内部に機能的に重要な配列(コア・エレメント)を同定したので、現在酵母one-hybrid法を用いてこれらの配列に結合可能な転写因子のスクリーニングを行っている。 3.転写調節機構の破綻を病因とする性分化異常症の存在を予想して、Hypogonadotropic hypogonadism患者由来のゲノムDNAを用いて脳下垂体特異的エンハンサー領域の変異検索を行ったが、現在までのところ変異は検出されていない。Leydig細胞特異的エンハンサーの解析は、共同研究者の緒方勤(国立成育医療センター研究部長)により現在進行中である。今後、さらに多数の患者のゲノムを対象に、解析を続ける予定である
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