本研究の目的はPML機能のアセチル化による調節の機構解明、及びアセチル化を介したPML機能増強によるAPL細胞のアポトーシス誘導にある。具体的には以下の4点である。1.PMLアセチル化が起こる事の証明。2.アセチル化部位、アセチル化、脱アセチル化に関わる因子の同定。3.アセチル化がPMLの機能に与える影響(蛋白-蛋白結合の変化、リン酸化、SUMO化といった他の蛋白翻訳後修飾に与える影響、蛋白安定性の変化等)の検討。4.既知あるいは新規ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬でPMLアセチル化を誘導する物の検索及びそれによるAPL細胞アポトーシス誘導の試み。平成18年度は上記1-3を行う予定であった。 平成19年2月時点で我々は試験管内でPMLがp300、GCN5によりアセチル化される事を証明しそのアセチル化部位を同定した。細胞内でもPMLがアセチル化されており、それは既知のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)の刺激により増強される事も見いだした。更に細胞内ではPMLのアセチル化がPMLのSUMO化を増強する事を発見し、これが腫瘍細胞のアポトーシスの誘導に関与している事が予想された。TSAはAPL細胞に留まらず腫瘍細胞全般にアポトーシス誘導作用を持つことが知られており、現在はTSAによるアポトーシス誘導におけるPMLアセチル化の関与を証明するべく研究を遂行中である。 またPMLの細胞増殖への関与を調べる過程で、PMLと協調してAPLの発症に関与していると考えられているFLT3重複縦列変異(FLT3/ITD)のシグナル伝達とFLT3シグナル阻害剤による増殖抑制効果についても検討する必要が生じこれを行った。こちらは他の研究データとあわせて学会で報告し、論文として出版し、特許を申請した。
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