研究概要 |
平成17年度までに樹立したtal1/scl遺伝子を恒常的に発現するCM ES細胞(CM ES-tal1/scl細胞)株を用いて、効率的な赤血球・血小板産生系の検討を行った。 1.遺伝子導入法を用いた赤血球・血小板産生系の検討 CM ES-tal1/scl細胞株を接着培養法により分化誘導し、分化誘導後4日目あるいは7日目にレンチウィルスベクターを用いてGFP, gata1,nfe2,runx1c遺伝子(赤血球・血小板分化に重要な転写因子群)をそれぞれ過剰発現させた。分化誘導後14日目にメイ・ギムザ染色及びヘモグロビン(Hb)・CD41抗体染色を行ったところ、いずれの場合においてもHb陽性赤芽球や核数2N-4Nから成るCD41陽性巨核芽球が確認された。しかしながら、脱核した細胞や8N以上に多核化した細胞は観察されず、全Hb・CD41陽性細胞数にも顕著な相違は見られなかった。このことから、さらなる分化誘導条件の検討が必要であると考え、現在、遺伝子導入時期及び多重感染実験の検討を行っている。 2.CM ES-tal1/scl細胞株由来巨核球・血小板に対する検出系の検討 本研究において巨核球・血小板マーカーとして用いているCD41抗体は近年、個体発生初期において造血前駆細胞マーカーとしても機能するとの報告があることから、より正確にES細胞由来巨核球・血小板を検出するためにはさらなる検出系の確保が必要である。このような視点から、まずCM骨髄細胞を用いてvon Willebrand factor (vWF)抗体染色を行った。その結果、骨髄中の巨核球と予想される多核化した巨細胞が強く染色された。またCM末梢血を用いて電子顕微鏡解析を行い、CM血小板の形態学的解析を行った。今後は、先の分化誘導条件の検討と共に、CD41抗体を用いた解析、vWF抗体染色、電子顕微鏡解析を組み合わせ、詳細を検討していく予定である。
|