研究概要 |
本年度は特にコモンマーモセット(CM)ES-tall/scl細泡株からの血小板分化誘導系に重点を置き、1.巨核球・血小板産生系における最適培養条件の検討、及び2.電子顕微鏡法を用いた形態学的解析を試みた。 1-(1)培養液の検討:分化誘導後14日目のCD41陽性細胞数を指標とし、最適培養液の検討を行った。その結果、従来使用していた血清入りの培養液よりもビタミンB_<12>・葉酸等を添加した無血清培地の方がより効率良く分化誘導が行えること力明らかとなった。 1-(2)巨核球・血小板関連遺伝子導入による検討:tall/scl遺伝子に加えて巨核球・血小板関連遺伝子であるgatal,nf-e2,runxlc各遺伝子をES細胞分化誘導時に同時導入し、巨核球・血小板産生能の検討を行った。しかし昨年度行った単一遺伝子導入時と同様に、巨核球・血小板産生能の顕著な効率化は観察されなかった。 2-(1)電子顕徴鏡法を用いたCM末梢血血小板の形態学的解析:予備実験として、CM末梢血血小板を用いた電子顕微鏡解析を行った。ヒト末梢血血小板での報告をもとに各種条件設定(血小板分離方法、電子顕微鏡解析用固方法血小板活性化試薬の条件等)を検討し、ヒトと類似したCM血小板構造を観察した。また、抗vWF抗体を用いた免疫電子顕微鏡解析を行い、ADP及びトロンビン刺激により活性化する血小板像を観察した。 2-(2)電子顕微鏡法を用いたCM ES細胞由来血血小板の形態学的解析:上記の条件を用いてCMES細胞由来血小板様構造物の電子顕微鏡解析を行った。その結果、血小板様の構造は観察されたものの、免疫電子顕微鏡解析や細部にわたる構造解析においてCM血小板と同定するまでには至らなかった。 【まとめ】CMES細胞分化誘導系において血小板様の産生物が確認できたが、現段階では産生効率が悪く、今後さらなる高効率分化誘導系の構築が必要である。
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