H18年度は、(1)造血前駆細胞に特異的に高いレベルで発現を認める細胞周期調節因子Cdk6と相互作用する可能性を持つ分子の同定と、(2)本研究開始時に既に固定していたCdk6転写制御因子Runx1との相互作用の機能解析を中心に研究が行われた。(1)に関しては、赤血球・巨核球系細胞の分化に必須の転写制御因子であるGata-1を同定することができた。現在、Gata-1と他の転写制御因子の相互作用におけるCdk6の機能解析を進めているところである。(2)に関しては、Cdk6が細胞周期制御とは異なりキナーゼ活性非依存性にRunx1のDNA結合能を阻害すること、この阻害効果が細胞周期調節におけるパートナーであるCyclin Dとの結合を必ずしも必要とはしないこと、Runx1に対する阻害作用はCdk4と比較してCdk6に特異的に強く観察されること、さらにRunx1の機能阻害を介して骨髄球系前駆細胞の増殖・分化のバランスを制御することを見出した。これらの知見はいずれもこれまでの報告がなく、組織特異的な細胞周期調節因子が細胞周期制御とは異なる機構で細胞分化を制御しうることを示した点で意義を持つといえる。また本研究の過程で、Runx1が未分化前駆細胞と分化しつつある骨髄球系細胞において、分化段階に応じて異なる転写制御機構を用いて細胞増殖から分化への切り替えを行うことを示す、新たな知見を得ることができたことも合わせて申し添えたい。
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