1.患者データベースの作成 平成18年度においては自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、関節リウマチ(RA)の患者を中心に、文書による同意を得たのちにゲノムDNAを収集するとともに、臨床検査成績、臨床症状の収集、解析を行い患者データベースを作成した。現在のところ、SLE患者約300名、APS患者約100名、RA患者約50名のデータベースができつつある。同時にケース・コントロールスタディのために自己免疫疾患を持たない健常人コントロールのゲノムDNAも収集し、これまでのところ約200名程度のサンプルが集まっている。 2.疾患感受性遺伝子に関する研究 SLE、APS、RAの病因や病態に関与する可能性が考えられている、免疫関連分子、血栓症関連分子などを中心にTaqManアッセイなど様々な方法を用いて、遺伝子多型解析を行った。 (1)CD45は膜型チロシンホスファターゼであり、免疫担当細胞(T細胞やB細胞)のpシグナル伝達に重要な役割を果たす分子である。CD45 exon 6 138A/G多型は、日本人をはじめとしたアジア人に比較的多く見られる多型だが、欧米人には少ない。SLEならびにAPS患者においてこの多型を解析したところ、SLEでは関連が認められなかったものの、APSにおいてはこの多型との有意な相関が認められた。CD45の関与するシグナル伝達が免疫系だけではなく、血栓傾向に関与する可能性が考えられた。 (2)Toll like receptor 5(TLR5)は自然免疫に関与する分子であり、欧米人において1174C/T多型(TLR5-stop)はSLEの発症と関連があると報告されたが、本研究においての解析では日本人においてはこの多型の頻度は低く、SLEとの有意な関連は認められなかった。 (3)Fcγレセプター3Aは免疫に関与する重要な分子であるが、RAの重症度や生物学的製剤に対する治療反応性と関連すると報告されている。本研究では、RAや生物学的製剤に対する反応性との検討を行なったが、これまでのところRAの発症や治療反応性などとこの多型との有意な相関は認められていない。
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