研究概要 |
カルパインは,Ca依存性システインプロテイナーゼの1つだが,皮膚筋炎・多発性筋炎(PM/DM)の病変部位で過剰発現していることが知られ,筋炎病態への関与が示唆される.ミオシン誘発筋炎(MIM)は,マウス・ラットを異種動物ミオシンで免疫して筋炎を誘発する実験動物モデルで,病理学的検討からPM/DMの実験動物モデルと考えられている.今回,カルパイン阻害薬E-64-dによるMIMの治療を試みた. ウサギミオシン0.5mgをCFAと懸濁乳化し,SJL/Jマウス(5週齢,雌)の背部皮膚に3回(第0,7,14日)皮下注射して筋炎を誘発し,治療目的でE-64-d 15mg/kg/day(HD群),E-64-d 7.5mg/kg/day(LD群),対照溶液(Ctrl群)を連日(第0〜27日)腹腔内投与し,第28日に大腿四頭筋を採取し病理所見を評価した. Ctrl群では,筋線維周囲への炎症細胞浸潤と筋線維の変性・壊死像を認めたが,HD群・LD群では病理所見が改善していた.小島分類(Kojima T, et al., J Neurol Sci, 151(2),141-148,1997)により点数化したところ,Ctrl群2.8±0.3点に対しLD群1.9±0.3点(N.S.),HD群1.9±0.2点(P=0.03)と有意な改善がみられた. カルパイン阻害によるマウス実験的筋炎モデルへの治療効果が示された.本実験動物モデルの筋病変の病態においてカルパインが促進的に作用しており,それがE-64-dにより抑制されて病理学的筋炎所見が改善したと考えられた.
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