HIV-1の増殖には、細胞内に存在する複数の宿主因子が関与することが報告されている。これまでの研究により、IL-4刺激した健常者由来CD4^+ CD38T細胞サブセットを用いてウイルスの感染性を比較したところ、CD38^-に比べCD38^+サブセットにおいて高いウイルス複製が観察された。そして、細胞表面におけるreceptorおよびco-receptorの発現レベルには、両サブセット間で顕著な違いは見られず、ウイルスの吸着、侵入過程には差が無いことを示していた。そこで、本研究では、CD4^+ CD38T細胞サブセットを用いて、HIV-1複製に影響を与えうる細胞宿主因子の同定とその機能解析を行った。IL-4刺激したCD38^+に比べIL-4刺激したCD38^-サブセットで発現の高いものとして5つの宿主遺伝子を同定した。CD38^-サブセットは、HIV-1に対して低感受性を示すため、これらの5遺伝子はHIV-1複製に抑制的に働いている可能性が考えられた。そのうちの1つRNF125について詳細に検討を行った。強制発現系およびRNA干渉法を用いた検証により、RNF125がHIV-1複製に抑制的に機能することが明らかとなった。さらにこの抑制効果は、健常者ドナー由来のPBMCsにおいても観察された。RNF125はE3ユビキチンリガーゼに共通のドメインであるRINGフィンガードメインをもち、このドメインに変異を導入したところ、HIV-1に対する抑制効果が見られなくなった。ノーザンブロット法およびレポーターアッセイ法でもその抑制効果が見られたことから、RNF125はHIV-1の転写段階で抑制的に機能していることが考えられた。これらの結果により、HIV-1の転写を制御している宿主因子をRNF125が標的とし、ユビキチン・プロテアソーム系にリクルートしていることが考えられた。
|