研究概要 |
活性炭処理によりステロイドホルモンを除去した血清、およびフェノールレッド(類エストロゲン作用を示す)不含培地を用いてモノサイト由来樹状細胞(Mo-DCs)を誘導する方法を構築した。誘導されたDCは樹状突起を有するとともに、HLA-DR^+,CD40^+,CD80^+,CD83^<low>,CD86^<low>,CD1a^+の特徴を示しており、アロナイーブTh細胞の増殖応答を誘導した。このDCは、ERα、ERβ、およびGPR30のmRNA発現および蛋白発現を示すことから、これらを介したシグナルにより、機能的修飾を受けることが示唆された。17β-estradiol(E2)あるいはbisphenol A(BPA)は、TNFαによって誘導されるDCの成熟状態に影響を及ぼさなかったが、これらの濃度依存性にCCL1遺伝子およびCCL1蛋白の発現を促進した。特に妊娠後期の血清E2濃度(20-60ng/ml)のE2を用いた場合では、CCL1の発現が著しく上昇した。これらの観察は、ER特異的阻害剤であるICI182,780により完全に消失した。また、E2あるいはBPA存在下TNFα刺激したDCは、その後のCD40 ligationにおけるIL-10/IL-12p70産生比の上昇を示した。さらに、E2あるいはBPAをDCの成熟過程に付加することにより、分化Th細胞におけるIL-4/IFN-γ、IL-5/IFN-γ、IL-13/IFN-γ産生比、および細胞表面におけるCCR4/CXCR3発現比が上昇した。以上より、類エストロゲン存在下TNFα刺激したDCは、アロナイーブTh細胞のTh2分化を誘導することが明らかとなった。これらの現象を裏付けるDCのOX40L、CD86やJagged1などの細胞表面分子の発現レベル等の変化は認められなかった。ヒトは内因性のエストロゲンの他に、合成エストロゲンや植物エストロゲンに暴露されている。また、BPAなどエストロゲン様作用を示す内分泌撹乱物質にも暴露されている。これらは、DC機能を修飾することによりTh応答に影響を及ぼす可能性がある。
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