強皮症は皮膚や臓器の過剰な線維化と末梢循環障害を主体とする全身性疾患である。とりわけ末梢循環障害は生命予後を左右する重篤な病態だが、その病態には不明である。我々は強皮症患者でCD34・CD133・VEGFR2陽性の末梢血単核球として定義される循環血管内皮前駆細胞(CEP)の減少やin vitroでの成熟障害を見出し、内皮修復機転の障害が血管病変を誘導するという概念を提唱した。本研究ではCEPの分化の場である骨髄に着目しCEP異常の原因解明を目的とした。血管内皮の幹細胞に特異的なマーカーや分化誘導因子については不明な点が多いことから、本年度は骨髄細胞を用いたヒト血管内皮コロニー形成能(CFU-EC)の定量的評価系の樹立を中心に研究を進めた。 比重遠心法にて骨髄単核球を回収し、造血及び血管内皮前駆細胞に共通して発現するCD34陽性細胞(純度90%以上)を磁気ビーズ標識モノクローナル抗体を用いた磁気細胞分離法により分離、フィブロネクチンをコートした12-well plateの各ウェルに0.5または1×10^5個ずつまき、血管新生因子を含むEBM2培地中で培養、14日目に底面に付着し増殖するコロニーを得た。とくに、骨髄ストローマ細胞やCD34陰性細胞と径0.4μmのメンブレンを介して共培養した結果、定量的評価が可能なコロニー数を得た。また、コロニーを形成する細胞集団は2種類存在し、血管内皮様の敷石状細胞から構成されるコロニーはVEGFR2陽性、vWF陽性、CD45陰性の細胞集団であり、CEPを含む非血球系の前駆細胞から分化した血管内皮と考えられた。一方、VEGFR2陰性、vWF陽性、CD45陽性の紡錘形細胞から構成されるコロニーは、血球系への分化を介したものと考えられた。今後、樹立したCFU-ECの定量的評価系を用いて、強皮症患者および対照群にて比較検討を行う予定である。
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