研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)は、炎症性細胞の浸潤と滑膜線維芽細胞の増殖を特徴とする慢性炎症性疾患である。申請者らは、関節破壊の直接的原因となっている滑膜細胞の増殖をサイクリン依存性キナーゼ阻害分子(CDKI;p21^<Cip1>,p16^<INK4a>)によって抑制し、RAの病態を制御するという細胞周期制御療法研究を行っている。これまでに、関節炎モデルの関節滑膜にp16^<INK4a>遺伝子を強制発現させると、滑膜細胞の増殖を抑制することで、極めて効果的な遺伝子治療となる。またRA滑膜細胞では、他の線維芽細胞とは異なり、p21^<Cip1>の強制発現が内因性p16^<INK4a>発現を特異的に誘導する。申請者は、p21^<Cip1>が滑膜細胞特異的に内因性p16^<INK4a>を誘導する機序を明らかにすると共に、関節炎治療の応用を目指している。 今年度は、滑膜細胞にp21^<Cip1>を導入し、経時的にGene chip analysisを行い、p21^<Cip1>により制御される候補遺伝子を複数同定した。この同定した遺伝子を線維芽細胞に強制発現させると、mortalin-2(mot-2)のみがp16^<INK4a>の転写活性を顕著に上昇させることを見出した。また、mot-2はp16^<INK4a>のタンパクも誘導した。さらに、p16^<INK4a>のプロモーター解析により、-247bp以内の領域がmot-2のp16^<INK4a>の発現調節に重要であることが考えられた。この領域には、転写因子Etsの結合部位があり、mot-2はEtsを介してp16^<INK4a>の発現を制御していることが考えられた。ことから、p21^<Cip1>→mot-2→Ets→p16^<INK4a>の機序で制御されていることが考えられた。今後は、mot-2を発現するアデノウイルスベクターを用いて、関節炎モデルにmot-2を遺伝子導入し、関節炎におけるmot-2の治療効果を検討する。
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