研究概要 |
先天性中枢性低換気症候群(Congenital central hypoventilation syndrome : CCHS)は,睡眠時の低換気もしくは無呼吸を特徴とし,明らかな循環・呼吸器疾患,神経筋疾患,代謝性疾患,先天奇形などが除外された症候群である.2003年,Amielらは本症の病因をPHOX2B遺伝子の遺伝子異常と同定した.私達のグループも10症例を解析し,CCHSの発症にはPHOX2Bの変異が重要な役割をしていると確認した. 平成18年度は,更に16例を解析し,以前に解析した10例と併せ変異と臨床型との関係を検討した.26例中24例に変異を認め,22例は5-13個のポリアラニンの伸長変異であり,1例にframeshiftの変異を確認した.5アラニン伸長例では合併症を伴わず,伸長が長い程,巨大結腸症などの合併を伴い,重症である傾向が確認された.また,18例の両親の遺伝子検索を行い,16例ではde novoの変異であり,6アラニン伸長の母親にモザイク変異を,5アラニン伸長変異の症例では3世代に渡り同変異をもつ家系を認めた.患児は,生後間もなく発症し,母方叔父は31歳時に心不全で発症したlate-onset central hypoventilation syndrome(LO-CHS)であり,母と母方祖母は検査によりLO-CHSと確認された.また,兄には睡眠時無呼吸を認めず,症状の多様性を確認した. 今回の研究から,CCHSの家族検索は,潜在性の罹患者やモザイクの両親を検出する事ができ,治療や遺伝カウンセリングの面から有用と考えられた.
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