前年に続きpermanent producer cell lineの作製を遂行したが、多数回の遺伝子導入、limiting dilutionなどの試行錯誤によっても、293T一過性発現の系で作製されるウイルスタイターには及ばなかった。そのため、以後の全ての実験は後者により調整したウイルス液によって行なった。ヒトNK細胞にヒトIL-2遺伝子を導入し、詳細にその機能変化について検討した。高い純度(CD3^-CD56^+分画99.5%以上)と高率の遺伝子導入が得られた(GFP^+80.5±11.3%)。IL-2遺伝子を導入した細胞でのconstitutiveなIL-2の発現が細胞内サイトカイン染色(FACS)および培養上清ELISAにより示された。IL-2遺伝子導入NK細胞によるK562細胞株に対する4h-cytotoxicityはコントロールに比較しほぼ不変であったが、1週間の共培養ではIL-2遺伝子導入NK細胞で有意な腫瘍細胞増殖抑制を示した(残存腫瘍細胞58.4±1.3% vs 97.3±2.1%、E/T比0.5:1)。この結果は、細胞障害活性の測定前のexogenous IL-2 withdrawalによりさらに顕著となった。遺伝子改変NK細胞をIL-2非存在下で72時間培養した後で同様の検討を行なったところ、IL-2遺伝子導入NK細胞は細胞障害活性を維持していたが、mock NK細胞では著明な障害活性の低下を認めた(82.9±1.1% vs 30.9±4.1%、E/T比1:1)。IL-2 withdrawal後のNK細胞のsurvivalは、IL-2導入細胞で著しい生存延長を認めた(cell recovery176.2±5.9% vs 21.6±0.8%、72時間)。IL-2遺伝子導入により、患者への細胞輸注におけるIL-2 withdrawalによるNK細胞の生存低下と細胞障害活性低下を抑制し、結果としてより高い抗腫瘍効果を発揮できる可能性が示唆された。これらの作業に平行して、前年度に作製したIL-7を発現するベクター、IL-15を発現するベクターにより、それぞれレトロウイルス液を調整した。十分なタイターを有するものが調整できた。次年度にIL-2、IL-7、IL-15のNK細胞への遺伝子導入の効果を比較する予定である。
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