てんかんモデルマウスにおける神経回路形成関連蛋白遺伝子のエピジェネティクス調節異常の証明てんかんモデルにはよくカイニン酸の投与が使用されるが、本研究ではエピジェネティカルなDNAの遺伝子調節を検討するため、DNAメチル化結合蛋白質の一つであるMeCP2ノックアウトマウスとバルプロ酸(VPA)投与マウスを用い抑制性に関与するKCC2の発現を確認した。MeCP2は小児性神経疾患のレット症候群の責任遺伝子で標的遺伝子にBDNFが上げられる。これまでに、レット患者が引き起こすてんかんのメカニズムについては不明であった。我々はレット患者やノックアウトマウスのBDNF量が高い事に着目し、BDNFによるKCC2の発現抑制に関連するレット症候群のてんかんのメカニズムついて検討を行なった。その結果、ノックアウトマウスのKCC2の発現は減少傾向であった。また、VPA投与マウスは自閉症のモデルマウスとして使用されているが自閉症にはてんかんを併発する事が多く、その頻度は通常のてんかんの発生頻度の倍以上となっている。今回VPA投与のモデルマウスにおいてもKCC2の発現の減少が認められた。他のメチル化試薬であるメチオニンによるKCC2の発現変動を検討した所、特に変化は見られなかった。今後標的遺伝子のメチル化やヒストン蛋白の修飾などを検討する事が必要となった。本研究では抑制性の性質の獲得には神経活動の活性化が重要である事が示唆された。特にてんかんの症状にBDNFが関わっているという事、またVPAやMeCP2等のDNAメチル化調節蛋白と発現の調節は自閉症とてんかんとの新たな関連性も示唆している。特にVPAは分化や細胞成熟、増殖に作用する事が近年報告されている事から未熟な神経細胞への効果が考えられ、非常に興味深い結果となった。今後ChIP法等でさらに詳細なデータとしてまとめる予定である。
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