本研究では、抗てんかん薬の作用部位に関わる遺伝子、薬物の代謝酵素や輸送担体をコードする遺伝子、肝での解毒作用に関与する遺伝子など各種遺伝子の多型等を解析し、小児てんかん患者における抗てんかん薬に対する薬剤感受性や副作用発現の原因遺伝子および遺伝子型を同定し、遺伝子解析に基づいた抗てんかん薬の適正使用を確立することを目的としている。 平成18年度は、神戸大学医学部附属病院小児科に通院中で、インフォームドコンセントを得たVPA内服中のてんかん患者41名を対象とし、バルプロ酸(VPA)による副作用である高アンモニア血症と、アンモニアの解毒に関与する尿素回路の酵素であるCarbamyl Phosphate synthetase 1(CPS1)の活性に影響を及ぼすとされるCPS1遺伝子型との関連について検討した。CPS1遺伝子4340位にAアレルを有し、VPAに加え2種類以上の抗てんかん薬を併用している場合に、高アンモニア血症を呈しやすいことが明らかにした。 そこで平成19年度は、平成18年度に得られた結果をもとに、患者数を追加し全56名を対象として、更なる検討を行った。その結果、「VPAに加え2種類以上の抗てんかん薬を併用している群」は、「VPAのみ」、あるいは「VPAに加え1種類の抗てんかん薬を併用している群」と比較して、アンモニア値が有意に高かった。さらに、「VPAに加え2種類以上の抗てんかん薬を併用している群」について遺伝子型で分けて検討し、CPS1遺伝子型CA^<4340>あるいはAA^<4340>を有する患者は、CC^<4340>を有する患者と比較して有意にアンモニア値が高値を示す(p<0.05)ことを明らかにした。 CPS1遺伝子型が、VPAを内服する患者について高アンモニア血症の発症予測因子となることが示唆された。
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